中国、裏の次世代ロボット政策とは? 元政府機関研究員の社会学者が衝撃的提言

習近平政権が掲げる次世代産業政策「中国製造2025」は米中摩擦の火種ともなったが、その裏で別の“性策”が今、秘かに進められていた。衝撃の内容とは!

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 2月、中国社会科学院の元研究員で、著名な社会学者でもある李銀河氏から衝撃的な発言があった。現在、性人口比率が極端に男性に偏っている中国では、’50年に約3000万人の男性が“余る”という予測に対し、「セクサロイド(疑似性行為用ロボット)を活用すべし」と述べたのだ。さらに、セクサロイドは会話や家事が可能になるほど技術的に発展を遂げ、値段も30万円前後と庶民の手の届く範囲になり、爆発的に普及していくと李氏は予想した。  とんでもない予想のように思えるが、中国ではその言葉が真実味を帯びるように、すでにAI(人工知能)を搭載したラブドールが発売され、アダルトグッズ市場は急拡大している。中国調査会社・iiMedia Researchによれば、ECを通じた取引が急増して、市場規模は’20年に約2.8兆円に達するとのこと。また、近年ではアダルトグッズの製造販売企業が次々と新三板ベンチャー主体の店頭市場)に上場している。テクノロジーメディア『ロボティア』編集長の河鐘基氏は言う。 「中国政府は、『中国製造2025』というロードマップを掲げ、5Gなど次世代情報技術、ロボット技術、新素材技術などを重点的に育成しようとしています。BATIS(バイドゥ、アリババ、テンセント、アイフライテック、センスタイム)と呼ばれる中国IT&AI企業は米GAFAと技術レベルでも負けていない。高度な技術を持ったテクノロジー企業が続々と登場するなか、興味深いのは、アダルトグッズ産業においても最新技術を取り入れた企業群が現れ始めていることです」

 

AIスピーカー」の役割も果たす

 

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  最先端の技術を駆使するアダルトグッズ企業としては、金三娃娃やEXDOLL(後述)がその代表例となる。両社はAIドールを開発する新興メーカーだ。例えば金三娃娃の最新のAIドールは中国検索大手・バイドゥクラウドサービス「百度雲」と連携。膨大な量のデータを蓄積・学習でき、ユーザーの感情を読み取る深いコミュニケーションが可能となるのだ。また会話だけでなく、最新のニュースや天気情報などを音声で案内してくれる「AIスピーカー」の役割も果たしている。  一方、関節へのこだわりも徹底している。性行為に合わせて、頭部や手足、股関節や腰の関節の可動域がほぼ再現されているのだ。性器や口はモーターで制御され、本物と遜色がない。通常の性交やフェラチオはもちろん、アナルセックスまであらゆるプレイが可能になるこのAIドールは約19万円。同社は下位モデルも含め、毎月1500~2000体のAIドールを生産しており、うち80%を海外に輸出しているという。 

 

AIドールの普及が進む中国特有の事情

世界に先駆けてAIドールの普及が進む中国だが、特有の事情があるようだ。中国在住のライター・吉井透氏は言う。 「そもそも、中国人はリアルドールへの抵抗が少ないんです。長らく一人っ子政策が敷かれていたため、避妊具をはじめ、性欲を処理するためのアダルトグッズはいわば政府の“お墨付き”を得て普及していった。今もエロ本は販売できないのに、街中に堂々とアダルトショップがある異様な国です。日本人よりも、アダルトグッズはより身近な存在なんです」  近年、中国でも高齢化社会が到来しており、高齢者人口は2億4000万人に達しているが、うち10%を独居老人が占めるなか(国家衛計委員会)、男性の独居老人たちの間でリアルドールが寂しさを紛らわせてくれる“伴侶”として人気を博しているというのだ。  こうした素地がまずあり、そこにテクノロジーの進化で高性能化した結果、AIドールが市場に受け入れられたというわけだ。  こうした状況に対し、性倫理に詳しい京都教育大学・関口久志教授は、中国のAIドールの隆盛は「歪な人口抑制政策の負の一側面ではないか」と指摘する。 「中国では一人っ子政策により人々の『リプロダクティブ・ヘルス・ライツ』、つまり人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、子供を持つか持たないか、いつ、何人持つかを自由に決める権利を抑制してきました。男女の人口比率の問題もその権利抑圧が根源にあるといえます」

中国製セクサロイドが世界標準になる日

中国の男女出生比率は長期にわたり偏っており、’12年は女性100人に対し男性は117.7人に達した。正常な数字の範囲は105前後なので、明らかに人為的な操作によって生まれた社会問題だと関口氏は指摘する。 「セクサロイドとの性行為を、人間とのそれを含む多様な性行為のなかから自由に選択できる状況なら批判するべきではない。しかし、人為的に生み出された“結婚難民”にロボットをあてがうというのであれば悲劇そのものです。中国の場合、政策の一環としてセクサロイドなどの代用品を奨励していくというストーリーは十分あり得ます」  人口抑制策の負の遺産として生まれながらも、昨今ではビジネスとして大きな可能性を謳われている中国のAIドール。その勢いはとどまることを知らず、今後、新たな最新テクノロジーを導入しながらさらに成長していくだろう。 「AIドールは欧米でも開発が進んでいますが、中国は商品化までのスピードが速く、他のテック分野と同様、中国製が世界標準になる可能性もある」(河氏)  ラブドールと言えば日本製品が有名だったが、“中国性造2050”を経て、中国製のセクサロイドを我々が抱く日が来るのかもしれない。

中国AIドールの発展に日本の技術が貢献していた

中国のAIドールでもっとも有名なのが先に紹介したEXDOLL(大連蒂艾斯科技)だ。’17年には新三板に上場し、時価総額は現在、約93億円にものぼる。同社の最新AI搭載ドール「EX-ZERO」は音声認識や顔識別のほか、人間の表情や会話時の口の動きを学習する機能も。  将来的に金融や医療分野での活用も視野に入れており、用途を限定しない汎用ロボットに大化けする可能性もある。  世界有数の技術力を持つ同社だが、なんとCEOとAI開発責任者はともに日本に留学経験があるのだ(後者は早稲田大学で博士号を取得)。さらにCEOの楊東岳氏は、日本のラブドールの精巧さに感銘を受け、帰国して事業を立ち上げたほど。今回、楊氏へインタビューを申し込んだが、多忙とのことで代わりに以下のメッセージを頂いた。 「今後、記事読者と直接、交流できるような機会を設けたい! 私たちの理念や商品について皆さんと共有したいですね」  日本への“恩返し”となるのだろうか。